Mitrasphere Phiar's Soliloquies

フィアについて | 夢幻花に堕つ 前編

フィアについて | 夢幻花に堕つ 前編

夢幻花に堕つ 前編

「あたし、なんであんなこと…」

 夜風に当たろうと飛空艇から妖精の森へと降り立ったまではよかった。いざ一人になるとなぜ自分があんなことを言ったのか、まるで分からなかった。つい先ほどの事だ。フィアが所属するギルド、シエル クリール ホープ。その仲間に対して彼女は取り乱したようにこう言った。

『だ、だってあんな小さい子を泣かせるなんておかし………!』

 その時、それが彼女の本心だった。いや、その本心こそを今彼女は訝しんでいるのだが。
 小さな子、最近現れた新たな精霊、フェルゼーのことだ。幼く可愛らしい容姿とは裏腹に、様々な冒険者の魂を喰らってきたと言う。確かに、あの子との戦いは困難を極めた。圧倒的な魔力から繰り出される攻撃は卓越した護術士でも易々と防ぎ切れるものではなかったのだ。――しかしそれでも、倒した最後にフィアは見てしまった。本当の幼子のように泣く少女の姿を。
 倒したとて、また時間をおけば現れる。だが、その度に倒され、あの子は泣いているのではないだろうか。



 あの子は本当は人を殺すつもりなんてないんじゃないか?
 ただ、遊びたいだけなのではないか?
 その遊び方を知らないだけなのではないか?

 そう思ったのだ。



『まさか……魅了……されて……ない…か…?』

 寡黙な仲間から告げられたその一言に、残された意識が警笛を告げた。自分があの子に対して感じた事、思った事は全て偽りなのか?この気持ちは、罪悪感は、偽りのものなのだろうかと。

『あの妖精は……魅了…させて……魂を……奪う…』

 それは殺すと言うことだ。魅了させて魂を奪うのなら、魂を奪うことは遊びではなく、意図的に行っていると言うことになる。あの子は、人を殺そうとして殺している、ということになる。
 だからフィアはその言葉に、強い怒りを覚えた。あの子の事を悪く言うことは赦さないと。



 ――その時点でもうおかしかったのだ。
 それに気付き、もう何が自分の本当の意思か分からないまま、フィアは飛空艇から降りて一人になった。彼女は混乱していたかもしれない。仲間の言葉に正体の分からない怒りを感じ、その激情に任せて敵対してしまうことを本来の意思が恐れたのかもしれない。そこで口論となっていれば、目が覚めることもあったかもしれないというのに、彼女は…逃げてしまった。

「ううん、おかしいのは…あたしじゃない、あたしじゃ…。あんな小さな子を泣かせるなんて、おかしいよ…。」

 誰もいない夜森で一人彼女の声が響く。

「あの子はきっと、遊びたいだけなんだ…。だから、泣かせたらダメ…ダメなの…」

 彼女は夜道を進んでいく。向かおうとする先はただ一つ。
 もう彼女の心は変えられない。



 フェルゼーに対する感情が心を支配していくと、最初に疑問を抱いた彼女本来の意思は深層へと溶けていった――





勝手に登場させてごめんね!
な、名前は出してないから…出してないから。

5月19日22:30頃、飛空艇から夜風に当たりに行ったフィアちゃんのその後のお話です。
イベント化するかどうかは…未定!忙しくてねっ…!

元の会話

最終更新日: 2018/05/30(Wed) 14:35:49